遺言書を自筆証書遺言で書くときに意外とやっかいなのが訂正の方法です。
出来れば訂正せずに綺麗に書きたいところです。
そこで今回は遺言書を書く時に鉛筆で下書きしてからボールペンなどで清書しても良いのかについて解説していきます。
自筆証書遺言は鉛筆で書いても良いのか
自筆証書遺言は全てを自分で書かなければなりません。
しかし、その筆記用具に関しては特に規定はありません。従って鉛筆で書いても、もちろん大丈夫です。
現実には鉛筆で遺言書を書く人はあまりいないでしょうが、間違えたら簡単に消せるので鉛筆で書きたいという人もいるかもしれません。しかし訂正の方法は民法で規定されていますので、その通りに行わなければなりません。
実際の問題として鉛筆は簡単に消せるので、それは偽造しやすいということになりおすすめできません。また、長期間保存した場合、薄くなったりして読みづらくなる危険性もあります。その為、自筆証書遺言は万年筆やボールペンを使用して書くのが良いでしょう。
万年筆やボールペンを使用して遺言書を書く場合は、途中で違う筆記用具に変えないほうが良いです。インクが出なくなって、別のボールペンに変えるというのはよくあることですが、筆記用具が変わると偽装の疑いを持たれる危険性があります。従って、なるべくなら新しいボールペンを用意して書くのが良いでしょう。
また、最近では消せるタイプのボールペンもあります。これも偽造防止や保存の観点から、避けたほうが良いと思います。
自筆証書遺言は鉛筆で下書きしてもいいの?
自筆証書遺言を万年筆やボールペンで書くとなると困るのが書き損じた場合です。
誤字脱字があった場合などは訂正することになりますが、自筆証書遺言の訂正方法は民法に規定されており、その通りにしなければなりません。
自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
この方法が少し面倒ですし、訂正が多いと見づらい遺言書になります。
その為、出来れば間違いなく書きたいものです。また訂正などがない、きちんとしたものを残したいという人も多いかと思います。
ということで、一度鉛筆で下書きしてその上からボールペンなどで清書しようと考える人もいるでしょう。でも、鉛筆で下書きしてからボールペンで清書しても良いのか?と思う人は少なくないはずです。
このような判例がありました。他人の書いた下書きをなぞって、遺言者が清書した案件です。
この案件に対して裁判所は有効であるとしました。(※本人に自書能力があるなど個別の事案により違いがあるので、必ずしも有効となるとは限りません。)また、カーボン紙を使用した自筆証書遺言についても「筆跡によって本人が書いたものであることを判定でき、それ自体で遺言が遺言者の真意に出たものであることを保障することができる」という最高裁の判例があります。
とすると本人が書いた下書きに沿って本人が清書するのですから、当然、有効となると考えられます。
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