気をつけておきたい遺言書の有効期限と書き換えについて

遺言書について

遺言書を作成して気になるのが有効期限が存在するのかという点です。

だいぶ前に作成したものでもきちんと効力が発生するのか不安になる人もいるかと思います。

そこで今回は遺言書の有効期限と書き換えについて、気をつけて欲しい点を中心に解説していきます。

遺言書には有効期限はあるのか?

結論から言うと、遺言書には有効期限というものは存在しません。

どんなに古い遺言書でも自筆証書遺言の場合、破棄せずに残っていれば有効です。

しかし遺言書を新しく書き換えた場合で古い遺言が残っており、新しい遺言書と抵触する部分があれば、古い遺言の抵触部分は撤回されたものとみなされます。

この古い遺言書と新しい遺言書を残しておいた場合は少し注意が必要です。新しい遺言書を書いたから、古い遺言書は当然に失効していると思う人もいるかと思いますが、そうとは言えません。まず、そもそも遺言書は複数あっても構わないものです。例えば、古い遺言書には「Aに甲不動産を相続させる」、新しい遺言書には「Bに乙不動産を相続させる」といった内容を記載して残していた場合、内容が抵触していないので、どちらの遺言書も有効となります。抵触する部分、つまり矛盾する部分についてが撤回されたものとみなされますので、例えば古い遺言書には「Aに甲不動産を相続させる」、新しい遺言書には「Bに甲不動産を相続させる」と記載してあった場合は、古い遺言書の「Aに甲不動産を相続させる」という部分が撤回されたものとみなされます。

また、遺言後にその内容に抵触する法律行為をした場合も抵触する部分が撤回されたものとみなされます。例えばA不動産を長男に相続させるとしていたのに、その不動産を誰かに譲渡してしまった場合などです。その他にも、遺贈の目的物を破棄した場合も、その部分は撤回されたものとみなされます。例えば、自分が描いた絵画を相続させるとしていたのに、その絵画を捨ててしまった場合などです。

このように遺言書には有効期限はありませんが、年月の経過と共に、状況が変わっていくこともあります。その為、毎年、内容を確認して、場合によっては書き換える必要があります。

該当する相続財産を処分してしまったら

遺言書に有効期限はありませんので、かなり昔に書いた遺言書でも、きちんと民法の規定に沿って書かれていれば有効です。

しかし、長い年月が経てば状況も変わります。長男に相続させると書いていた株券を処分してしまったなんてことも十分にあり得ることです。その場合、該当する部分の遺言は失効することになります。それでも良い場合はそのままでも構いませんが、自筆証書遺言で失効してしまった部分を変更したい場合は、民法の規定に沿って加除、訂正をして書き換える必要があります。ややこしくなりそうな場合は、始めから作り直したほうが良いかもしれません。

遺言書を作成した後に財産が増えたら

遺言書を作成した後に財産が増えることも十分に考えられます。

通常、遺言書に記載のない財産については相続人が遺産分割協議をして分け合うことになります。もし、増加した財産についても相続人の指定をしたい場合などは、その財産をどのように分割するかも記載しておく必要があります。

【記載例】
・本遺言書作成後に遺言者が取得した財産については長男〇〇〇〇に相続させる。
・本遺言書作成後に遺言者が取得した財産については法定相続分に従って相続すること。

遺言書を書き換えたい場合

自筆証書遺言を書き換えたい場合、修正する方法もありますが最も確実なのは古い遺言書を破棄して、新しく自筆証書遺言を作成することです。ここでの注意は古い遺言書をきちんと破棄しておくことです。もし複数の遺言書が発見された場合、面倒なことになります。複数の遺言書の内容が無関係な場合や、両立できるものであれば古い遺言書も有効となりますし、内容が抵触する場合、その部分については新しい遺言書が優先され、古い遺言書の抵触部分は撤回されたものとみなされます。

このように古い遺言書と新しい遺言書が存在した場合、ややこしいことになってしまうので、古い遺言書は破棄して、新しい遺言書を初めから作り直したほうが良いでしょう。新しい遺言書には念のため「平成〇〇年〇月〇日に作成した自筆証書遺言を全て撤回する」といった内容を盛り込んでおくとなお良いでしょう。

次に公正証書遺言ですが、この場合は、ちょっと話が変わってきます。公正証書遺言を作成すると正本が渡されますが、これを破棄することで、遺言書を破棄したことになるのか、という点については見解が分かれています。

Q.遺言公正証書は取消できますか。そのときはどのようにすればよいのでしょうか。
A.法律上は「撤回」といいますが、一度作成した遺言公正証書を無かったことにすることです。遺言書を作成したときと同じように、証人2名の前で、公証人に対して、公正証書を無かったことにしたい旨を述べてもらい、公正証書に署名押印し作成します。なお、印鑑登録証明書(3か月以内)と実印が必要になります。
松戸公証役場HPより
http://www.matsudo-koshonin.jp/faq/faq01.html#yuigon_17

公正証書遺言は正本を破棄しても遺言書を破棄したことにならない可能性があるため、上記のように公正証書を作成して撤回したほうが良いでしょう。

また公正証書遺言を撤回したい場合は新しい遺言書で撤回する方法もあります。新しい遺言書で撤回する場合も公正証書遺言でしておくほうが安心ですが、自筆証書遺言で撤回しても構いません。

少し、ややこしいことになりそうな場合は、迷わず専門家に相談することをおすすめします。

公正証書遺言撤回の費用

公正証書遺言の撤回費用は11,000円です。

以下、公証役場の公正証書遺言作成にかかる費用について。撤回については④参照。

遺言公正証書作成の場合は、次のように算定します。
① 相続及び遺贈を受ける者が2人以上ある場合、各相続人及び受遺者ごとに、その目的の価額(その人が受け取る利益の総額)によって手数料を算定し、それを合算した額を目的の価額として算定します。
② 祭祀主宰者の指定、認知、未成年後見人の指定等は、独立の法律行為として算定不能として算定し、11,000円となります。
③ 目的の価額の総額が1億円以下の場合、遺言加算として11,000円を加算します。
④ 遺言の撤回だけの場合は、原則として、11,000円ですが、撤回して、新たな遺言をする場合は、新たな遺言により手数料を算定します。
⑤ 秘密証書遺言は、11,000円です。
⑥ 病院や自宅に出張する場合は、病床執務加算として通常の手数料の額にその2分の1を加算します((3)イの費用も必要です。)。
⑦ 具体例 例えば、9,000万円の遺産を半分ずつ相続人A、Bに相続させ、祭祀主宰者を定めた場合は、次のように算定します。
相続人Aの取得額分(4,500万円):29,000円、相続人Bの取得額分(4,500万円):29,000円、 祭祀主宰者の指定:11,000円、遺言加算:11,000円、合計8万円です(これに、正謄本代が必要であり、出張の場合には、⑥の加算と旅費、日当等が必要となります。)。

神田公証役場HP
http://kanda-kosho.jp/law.html

遺言書を書き換えなくても良い方法

状況の変化に伴い、遺言書を書き換えていくのは大変な作業です。その為、遺言書を書き換えなくても良いように、状況の変化にも対応できる遺言書を作成しておくことが大切です。

例えば、予備的遺言。

予備的遺言をしておけば受遺者が遺言者より先に死亡してしまっても、その受遺者が死亡した場合のことを書いておけば書き換える必要はありません。

また預貯金などは金額を書かず、銀行名や支店、口座番号などを記載して、その口座にある預貯金を遺贈させるようにします。これで、その口座に変動があっても書き直す必要はありません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました