遺言書で赤の他人に財産を渡すことができるか

遺言書について

生前にお世話になった友人や知人に遺産を渡したいという人もいるかと思います。

では遺言書で赤の他人に遺産を渡すことができるのでしょうか。

詳しく見ていきましょう。

赤の他人とは

ここで言う「赤の他人」とは推定相続人以外の人のことをいいます。

推定相続人とは、被相続人が死亡したときに、法律の定めから相続権があると考えられる人のことです。例えば、被相続人の配偶者や子供などです。配偶者や子供、親、兄弟、甥・姪などは推定相続人となる可能性がありますが、それ以外の友人や知人といった関係の人は推定相続人ではないので「赤の他人」ということになります。

遺言書で赤の他人に財産を渡せるか

では、本題の「遺言書で赤の他人に財産を渡すことができるのか」についてですが結論から言うと可能です。

相続人ではない者に財産を渡す場合、相続ではなく遺贈すると言います。遺言書には何を書いても有効になるというわけではなく、法律で定められた法定事項というものがあり、法定事項に関して書かれたものは有効となります。財産の処分については法定事項であり、被相続人の財産をどのように処分(相続・遺贈)するかは遺言者の自由です。従って、自分の財産を赤の他人に遺贈することも、もちろん可能です。

但し、遺言書は遺言者の一方的な意思表示なので、遺贈を受ける受遺者は辞退することもできます。そのため、確実に遺贈したいのであれば、遺言書ではなく死因贈与契約にするのも一つの手です。

また、他に相続人がいるのにも関わらず、赤の他人に全て相続させるとした場合、遺留分の問題が出てきます。遺留分は直系尊属のみの場合は相続財産の1/3、それ以外の場合は1/2です。この割合を上回る遺贈は、遺留分の対象となりますので注意してください。

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もうひとつ注意したいのが、相続は人を対象としており、日本の法律では犬や猫などのペットは物として扱われているため、ペットに遺贈するという遺言は無効となります。

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相続では内縁の夫や妻は赤の他人

近年では婚姻しない人も珍しくなく、いわゆる内縁関係にある人もいるかと思います。

内縁の夫・妻とは、一緒に生活しているなど事実上は婚姻関係にあるが、婚姻届を提出していないような状態を言います。内縁関係は法律上の配偶者とは認められませんが、婚姻に準ずる関係とされていますので、いくつかの法律で保護されているものもあります(ちなみに愛人とは不倫関係にある場合なので、法律では一切保護されません。)。

しかし、夫婦同然の関係を築いてきたとしても、内縁関係のカップルは相続上では、赤の他人という扱いになってしまいます。つまり相続人ではないということです。そのため、被相続人に推定相続人がいる場合、遺産は推定相続人に相続されてしまいます(唯一、賃借権については相続することができます)。

では相続人がいなければ、内縁の相手方のもとに遺産が入るのかというと、そうではありません。相続人がいなければ、被相続人の財産は国庫に帰属することになります。つまり国に持っていかれるということです。

但し、特別縁故者と認められれば、遺産を受け取れる可能性があります。特別縁故者は家庭裁判所で手続きをすることで認められます。特別縁故者として認められれば、他に相続人がいないので全ての財産を受け取ることができますが、相続税の配偶者控除は受けられないので注意してください。

このような事態にならないよう、内縁関係にある人は遺言書を残しておくと良いでしょう。遺言書があれば、家庭裁判所での手続きを経ることなく、遺産を受け取ることができます。

赤の他人が遺言書で包括遺贈を受ける際の注意点

赤の他人が遺言書で包括遺贈を受ける際は少し注意が必要です。

包括遺贈とは「不動産を○○に」とか「預金を○○に」といった特定の財産を指定するのではなく、「遺産の全部」や「遺産の1/2」といった具合に包括して割合を指定する方法です。

特に見ず知らずの他人から、遺言書で包括遺贈の話があった場合は注意しましょう。見ず知らずの赤の他人から財産を貰えるなんで夢のような話だと思うかもしれませんが、相続財産にはプラスの財産だけでなく、マイナスの財産も含まれています。従って、包括遺贈を受けた際は、借金や保証人などマイナスの財産も受け継ぐことになる可能性があります。借金を背負わせる詐欺の可能性もありますし、実印や印鑑証明書を送付させて悪用する場合もあり得ます。

この場合、遺贈を知った時から3か月以内に相続放棄の手続きが必要となります。放っておくと単純相続したことになってしまうので、3か月の間に遺産の内容をきちんと調べておきましょう。

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