遺言書は遺書とは違うの?
両方とも聞いたことがある言葉ですが、意外とその違いについて知らない人は多いと思います。
そこで今回は遺言書の意味や遺書との違いについて解説します。
遺言書とは
遺言書とは遺言者(被相続人)の最後の意思表示です。
被相続人は自分の死後、自らの財産について処分することなどができません。
そのため、遺言書を残し、相続人などに財産を分ける内容などを記載しておくのです。
遺言書には何を書いても良いというわけではなく、遺言書に書ける内容が法律で定められています。
これを法定事項といいます。
この法定事項以外のことを記載しても、無効になるわけではありませんが、法的効力は発生しません。
また作成方法についても法律で定められているので、その方式に従って作成しないと無効になる恐れがあります。
このように法律に定められた事項を記載し、定められた方法によって作成されたものが遺言書となります。
第九百六十条 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。
遺言書は15歳以上であれば作成することができるので、未成年者でも遺言することができます。
また成年被後見人や被保佐人、被補助人であっても遺言することができますが、成年被後見人の場合は2人以上の医師が立会い、正常な判断能力が回復したと確認された場合のみ遺言することができます。
第九百六十三条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。
遺言者が高齢者で認知症の疑いがある場合、その判断能力について疑義が生じる可能性もあります。
判断能力がないのにも関わらず、一部の相続人に都合のいい遺言書を書かせたのではないかと、後々にトラブルになる危険性もあります。
そのため、遺言書は元気なうちに残しておく必要があるのです。
では遺言書を書くとどうなるのか。
遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議をすることになりますが、遺言書がある場合は有効な遺言書であれば、原則としてその内容の通り執行されます。
例え、それが一部の相続人に有利な内容であってもです。
但し、遺留分を侵害した場合は、遺留分を侵害した者が侵害された者から、遺留分減殺請求をされる可能性もあります。
遺言書があれば遺産分割協議も必要ないので、遺産分割協議書の代わりに遺言書で相続手続きも行うことができます。
ひとつ注意しなければならないのが、遺言書は遺言者の一方的な意思表示という点です。
例えば契約に関しては双方の意思が合致していますが、遺言書は被相続人(遺言者)がこうしたいという一方的な意思表示なので、相続人や受遺者など対象者が辞退する可能性もあります。
また、遺贈の対象者全員が合意すれば遺言書ではなく遺産分割協議で遺産を分け合うことも可能です。
このように遺言書は強い効力を持っていますが、その通り執行されないという可能性もあります。
遺書とは
では、遺書とは何なのか?
遺書とは簡単に言うと、死ぬ前に残すメッセージのようなものです。
よく、遺書が発見されたという表現を聞きますが、それは死を覚悟した人や自殺する人が残す最後の文章です。
遺書の内容は家族へのメッセージや自殺する理由などが多く見られます。
これらは法律で定められた方法で作成されていないケースが多いので遺言書ではなく遺書となります。
つまり
法律で定められた方式で作成 → 遺言書
上記以外の手紙やメッセージ → 遺書
ということになります。
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