遺贈と相続って違うの!?今回は遺贈の意味と遺言書での書き方について解説します。
遺贈の意味とは
遺贈とは遺言で遺言者の財産を受遺者(財産を受け取る人)に譲ることを意味します。
遺言書がない場合は、相続人同士の遺産分割協議で相続財産を分けることになりますが、遺言書では相続人以外の者にも財産を譲ることができます。
通常、遺言書で相続人に財産を譲る場合、「相続させる」と書きますが、相続人以外に財産を譲りたい時は「遺贈」と書きます。
遺贈と相続の違いとは
まず、遺贈とは上記でも述べたように、遺言で遺言者の財産を受遺者に譲ることを意味します。
そして相続とは相続人に財産を譲る場合に使用する書き方です。
つまり遺贈は「遺言で遺言者の財産を受遺者に譲る」という意味の総称で、その中でも相続人に限定して財産を譲ることを「相続」と表記する、というイメージです。
なので、厳密に言うと相続人に対して「遺贈させる」と書いても間違いではありません。
相続 → 相続人のみ使用可
遺贈と相続の税金の違い
上記のように遺贈が相続人にも相続人以外にも使えるなら、遺言書には全部「遺贈」と書けばよいのでは?と思うかもしれませんが、ここにちょっとしたからくりがあります。
遺贈と相続の場合、かかる税金が違ってくるのです。
まず遺贈の場合、相続よりも高い相続税を支払う可能性があります。
法定相続人以外が財産を譲り受けた場合、相続税が2割加算されます。
相続や遺贈、相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人が、配偶者や※被相続人の一親等の血族以外の場合には、その者の相続税額にその相続税額の2割が加算されるからです。
よって、法定相続人でも相続税が2割加算されることがあります。
※被相続人の一親等の血族には代襲相続人となった孫(直系卑属)が含まれます。
また、相続の場合、基礎控除というものがあります。
3,000万円 + 法定相続人の数 × 600万円
上記の計算式で算出した額が控除されますが、遺贈の場合、この基礎控除が適用されない場合があります。
さらに遺贈された財産が不動産だった場合、不動産取得税がかかる可能性がありますし、登記申請する際にかかる登録免許税が相続よりも高くなります(登録免許税に関しては、相続人に「遺贈する」と書いた場合、以前は「相続させる」と書いた場合より高い税率でしたが今は同率となっています)。
このように遺贈と相続ではかかる税金に違いがあるのです。
遺贈と相続の手続きの違い
遺贈と相続では手続きの違いもあります。
不動産の遺贈と相続の違い
不動産を譲り受けた場合、不動産の登記をすることになりますが、この登記の手続きにも遺贈と相続で違いがあります。
「相続」の場合、その不動産登記は指定された相続人が単独で行うことができます。
ところが、「遺贈」の場合、受遺者は他の法定相続人と共同で所有権移転登記をしなければなりません。
相続人の印鑑証明書などが必要となるため、遺贈の場合は手続きに時間がかかりますし、相続人同士でトラブルなどがあった場合、登記手続きが進まないなんてこともあり得ます。
もっとも、遺言執行者が選任された場合は、遺言執行者と受遺者が共同で登記手続きができますし、受遺者が遺言執行者となれば単独で移転登記することができます。
また、「遺贈」の場合、登記をしなければ債権者に自分の権利を主張できませんが、「相続」の場合、登記がなくても自分の権利を主張することができます。
農地の遺贈と相続の違い
普通の土地ではなく農地を遺贈で譲り受けた場合、包括遺贈以外は農地法により農業委員会か知事の許可が必要となります。
もし受遺者が農業に従事していなければ許可が下りない可能性もあり、許可が下りないと登記をすることができません。
相続の場合は、農地法による許可は不要です。
借地権や借家権の遺贈と相続の違い
被相続人が土地を借りていたり、家を借りていたりした場合、その権利を譲り受けることもあり得ます。
借地権や借家権の相続の場合は賃貸人の承諾は不要です。
ところが遺贈の場合は賃貸人の承諾が必要となってしまいます。
遺言書での遺贈の書き方
このように遺贈と相続には大なり小なり様々な違いが存在します。
遺言書で相続人に対しては「遺贈する」「相続させる」どちらの書き方も使用することができます。
しかし遺贈よりも相続の方が税金や手続きにおいて優遇されているので、相続人に対してわざわざ「遺贈する」と書くメリットはないでしょう。
また、「遺贈する」以外にも「譲る」「与える」「あげる」「渡す」などの書き方がありますが、これらは「遺贈」と解釈されるので注意しましょう。
従って、遺言書の書き方としては相続人には「相続させる」、それ以外の者には「遺贈する」という形が良いでしょう。
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