遺言書を作成する時に問題となってくるのが遺留分です。
特定の人物に全ての財産を相続させたい時など遺留分を侵害する可能性があります。
そこで、遺留分を渡さなくていい方法があるのか、遺留分対策について解説していきます。
そもそも遺留分とは何か
遺留分とは被相続人の兄弟姉妹以外の相続人に対して認められる留保された相続財産の割合です。
わかりやすく言うと、最低限もらえる相続財産ということです。
例えば、夫・妻・長男・長女という4人家族がいたとします。
夫が亡くなり、いざ相続手続きという場面で遺言書が出てきました。中を見てみると、なんと愛人に全て相続させるという内容でした。
もし、遺言書の通りに愛人に全て相続されてしまうと、妻や子供たちは困ってしまいます。長年、連れ添った妻からしても納得のいくものではありません。
こういったことにならないよう、民法では遺留分というものを認めているのです。遺留分減殺請求というものをすれば、一定の割合で相続財産を取り戻すことができます。
よく勘違いしてしまうのが遺留分と法定相続分です。
法定相続分とは民法で定められている基本的な相続割合のことです。
遺言書がない場合は遺産分割協議をすることになりますが、協議がまとまらないときは原則として法定相続分通りに分けることになるでしょう。またこの法定相続分は相続税の計算や遺留分の計算の元となるものです。
遺言書による遺留分対策とその効力
それでは遺言書を作成するときに遺留分対策をすることはできるのでしょうか。
例えば、上記の例により夫・妻・長男・長女という4人家族がいたとします。夫は財産の全てを妻に相続させたいと考え、そのような内容の遺言書を作成しました。この場合、長男、長女の遺留分を侵害している為、二人が遺留分減殺請求をすると妻は請求を受け入れなければなりません。
では、遺言書によって遺留分を請求しないように定めることはできるのか。
残念ながら遺留分を請求しないように記載しても法的効力はありません。遺言書には法定事項を記載する必要があり、その他の事項を記載しても効力が及ばないのです。
遺言書の付言事項に遺留分について記載する
遺言書による遺留分対策のひとつとして付言事項に記載しておくという方法があります。
付言事項とは法的効力は及ばないものの、相続人などに伝えておきたいメッセージなどを記載しておく事項のことです。
付言事項として遺留分減殺請求をしないようお願いすることで、相続人からの遺留分減殺請求を阻止できる可能性があります。相続人としても遺言者からの遺志を無下にすることは忍びないでしょう。
この方法が一般的かつ角が立たない方法です。
【記載例】
妻○○には大変世話になった。若い時から苦労をかけ、○○のおかげで仕事も順調にいった。その苦労に報いるため、すべての財産を妻○○に相続させることとした。長男○○、長女○○は共に自立し立派に家庭を持っている。母さんの生活のためにも、遺留分減殺請求しないことを望む。
遺留分を渡さなくていい方法はあるか?
遺言書では遺留分に対して対策できることは限られています。
では他の方法で遺留分を渡さなくていい方法はないのか。
ひとつの方法として遺留分の放棄をしてもらう方法があります。上記の例で言うと長男と長女に遺留分の権利を放棄してもらうのです。
ただし、遺留分を放棄するには家庭裁判所の審判が必要で、本人が手続きをする必要があります。ハードルは高いですが、見返りの金銭などを支払って手続きをしてもらう方法もあります。
また、遺留分の権利は放棄しても相続の権利を放棄したわけではないので、遺言書ではなく遺産分割協議となった場合は権利を主張することができますので注意が必要です。
遺留分は残しておくのも得策
上記のように遺留分を渡さない方法というのはなかなか難しいところがあります。
そこで後で揉めないように遺留分は残しておくのも良いかと思います。
例えば上記の家族例で言うと長男と長女が遺留分を侵害されている場合は妻に遺留分減殺請求をします。これは、するほうもされるほうもあまり良い気はしませんよね。
また、妻が長男と長女に遺言書ではなく遺産分割協議による相続を説得される可能性もあります。遺産分割協議となると法定相続分が相続される可能性もありますし、長男と長女の説得によって、妻の相続分が法定相続分以下となる危険性もあります。
そこで長男と長女に遺留分に相当する1/8ずつを相続させる旨を遺言書に記載しておきます。これにより遺留分は侵害されていませんので、遺留分減殺請求をされる心配はありません。
まとめ
さて、いかがでしたか?
今回は遺言書による遺留分対策についてご紹介しました。遺留分についてはデリケートな問題でもあるので、困った時は専門家に相談するのもひとつの手です。
以上、「遺言書で遺留分対策はできるのか?」でした。最後まで、お読みいただきありがとうございます。
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