遺言書にはどんな効力があるのか?種類別に解説!

遺言書について

遺言書では財産のことを記載するものと思っている方も多いかと思いますが、実はその他にも効力をもたせることができます。

そこで今回は遺言書の効力について解説していきます。

どんな内容を記載することができるのかを理解して自分の遺志をしっかりと残しておきましょう。

遺言書には効力があるものとないものがある

遺言書というと「○○に自宅を相続させる」など財産の処分に関するものや、家族へのメッセージをイメージされる方がいるかと思いますが、遺言書には記載することで効力が発生するものとそうでないものがあります。効力を発生させることができるものが法律で定められており、これを法定遺言事項と言います。

効力のない事項を記載したら遺言書は無効になる?

上記のように遺言書は法定遺言事項を記載しないと効力は発生しません。

しかし、法定遺言事項以外のことを記載したからといって直ちに遺言書自体が無効となるわけではありません。あくまでも効力が発生しないだけです。

遺言書自体が無効となるのは遺言書の書き方が法律で定められて書き方ではなかった場合などです。

【種類別】遺言書の効力一覧

遺言書で効力をもたせることのできる事項(法定遺言事項)は大きくわけて、相続に関する事項、財産に関する事項、身分に関する事項、その他の事項、遺言執行に関する事項に分類されます。それでは一覧でご紹介していきます。

~法定遺言事項~

  1. 相続分の指定または第三者への指定の委託
  2. 遺産の分割方法の指定または第三者への指定の委託
  3. 特別受益の持戻免除
  4. 遺産分割の禁止
  5. 相続人の廃除と相続人の廃除の取消
  6. 遺留分減殺方法の指定
  7. 相続人相互間の担保責任の指定
  8. 遺贈
  9. 一般財団法人設立の意思表示
  10. 信託の設定
  11. 認知
  12. 未成年後見人と未成年後見監督人の指定
  13. 祭祀承継者の指定
  14. 生命保険金の受取人の変更
  15. 遺言執行者の指定または第三者への指定の委託

 

種類別の分類すると以下のようになります。

相続に関する事項
相続分の指定または第三者への指定の委託、特別受益の持戻免除、遺産の分割方法の指定または第三者への指定の委託、遺産分割の禁止、相続人の廃除と相続人の廃除の取消、遺留分減殺方法の指定、相続人相互間の担保責任の指定

財産に関する事項
遺贈、一般財団法人設立の意思表示、信託の設定

身分に関する事項
認知、未成年後見人と未成年後見監督人の指定

その他の事項
祭祀承継者の指定、生命保険金の受取人の変更

遺言執行に関する事項
遺言執行者の指定または第三者への指定の委託

 

遺言効力(遺言事項)の解説

それでは、遺言効力についてそれぞれ解説していきます。

 

相続分の指定または第三者への指定の委託

相続分の指定とは相続割合を指定することです。

相続分に関しては法律で法定相続分が定められていますが、法定相続分ではない特定の相続人に多めに相続させたい場合などに割合を指定する方法です。例えば、財産の1/3を長男に、1/4を次男にといった具合です。

この相続分の指定は弁護士や知人など第三者に指定の委託をすることもできます。

 

遺産の分割方法の指定または第三者への指定の委託

自宅を妻に、預貯金を長男に、株式を次男にといったように遺産の分割方法を指定することができます。また、遺産の分割方法の指定を第三者に委託することもできます。

 

特別受益の持戻免除

被相続人(遺言者)が生前に相続人に対して特別に金銭や財産などを贈与していた場合、他の相続人はその特別受益を受けていた相続人に対して財産の持ち戻しを請求することができます。

例えば、遺言者が子どもAに生活費の補助として200万円を贈与していた場合、他の相続人はその200万円の持ち戻しを子どもA請求することができます。

この特別受益の持ち戻しを遺言書で免除させることもできます。

 

遺産分割の禁止

通常、被相続人の財産は遺産分割協議でどのように分けるかを決めます。その遺産分割を最高5年間まで禁止することができます。

 

相続人の廃除と相続人の廃除の取消

相続人の廃除を遺言書ですることができます。

被相続人に対して虐待をしたり、重大な侮辱をした場合、被相続人の財産を勝手に浪費したなど、著しい非行があった時に相続人から廃除することができます。相続人の廃除は遺言書に記載すればそれだけで廃除できるものではなく、実際には遺言執行者が家庭裁判所に申し立てをすることになります。家庭裁判所で認められると相続人から廃除されます。相続人の廃除をすることができるのは配偶者、子ども、直系尊属です。兄弟姉妹は遺言書で相続させないことができるため、相続人廃除の対象者とはなりません。

もっとも、相続人の廃除はよほどの事情がない限り、あまり積極的には認められないようです。また相続人の廃除は生前にも家庭裁判所に申し立てをすることができます。遺言書で相続人の廃除をした場合、被相続人はすでに亡くなっているので家庭裁判所は残された資料などから判断することになります。生前であれば本人が意見を述べることもできるので、できることなら遺言書よりも生前に本人が申し立てするほうが良いと思われます。また、相続人の廃除をした場合、その相続人に子どもがいる時は、その子ども(被相続人の孫)が相続人となります。これを代襲相続と言います。

また、すでに廃除した相続人に対して、相続人の廃除の取消を遺言書ですることもできます。

 

遺留分減殺方法の指定

遺留分とは相続人が最低限もらえる財産の割合のことです。

特定の相続人に多く相続させた場合、その他の相続人の遺留分を侵害する場合があります。遺留分を侵害された相続人は侵害した相続人に対して遺留分減殺請求をすることができます。遺留分はどの財産から取り戻しても構いません。しかし、それでは困る相続人もいます。そこで遺留分減殺の方法について遺言書で指定しておくことができます。例えば、自宅を手放したくない場合、遺留分減殺は預貯金からすることと指定しておくことで自宅から遺留分減殺されることを防ぐことができます。

 

相続人相互間の担保責任の指定

相続した財産に欠陥などがあった場合、その損失について他の相続人も補う責任を負います。そのことについて遺言書で指定することができます。

 

遺贈

遺贈とは相続人以外の者に財産を残す方法です。

通常、相続人に財産を残したい場合は「相続させる」と遺言書に記載します。しかし遺言書で相続人以外にも財産を残す方法もあります。その場合は相続ではないので「遺贈させる」と記載します。相続人に対しても「遺贈させる」と記載しても無効とはなりませんが、「遺贈させる」と記載した場合、相続手続きが異なったり、相続人としてのメリットが受けられないなどがあるため、通常は「相続させる」と記載します。

遺贈は包括遺贈と特定遺贈があります。包括遺贈とは「全てを遺贈させる」とか「財産の1/3を遺贈させる」といった包括的に遺贈することです。特定遺贈とは「自宅を遺贈する」とか「○○会社の株式を遺贈させる」など財産を特定して遺贈させることです。

 

一般財団法人設立の意思表示

遺言者の財産を使って、財団法人を設立することを遺言書に記載することもできます。

この場合は後に説明する遺言執行者を選任しておくのが良いでしょう。

 

信託の設定

遺言書で財産を第三者に信託することもできます。

例えば未成年の相続人に財産を相続させた場合、その額が大きいと取り扱いに不安がありますよね。そこで財産を第三者に信託して管理してもらいます。信託の受託者から相続人に生活費など毎月決まった額を渡すことも可能です。

 

認知

子どもの認知を遺言書ですることができます。

婚姻関係にある者の子どもを嫡出子、そうでない者を非嫡出子と言います。子どもの認知をすることで非嫡出子として相続する権利が発生します。嫡出子と非嫡出子の相続分は同じです。以前は異なったのですが、最高裁で違憲と判決がされ、民法が改正されました。

 

未成年後見人と未成年後見監督人の指定

未成年後見人の指定を遺言書ですることもできます。

親が被相続人(遺言者)のみで子どもが未成年の場合、子どもの後見人が必要となります。また、未成年後見人を監督する未成年後見監督人の指定もすることができます。

 

祭祀承継者の指定

祭祀承継者とは先祖のお墓や仏壇などを承継する者です。遺言書で祭祀承継者の指定をすることができ、遺言書で指定しなかった場合はその地域の慣習によって決まります。慣習がない場合は家庭裁判所が選任します。

 

生命保険金の受取人の変更

遺言書で生命保険金の受取人を変更することができます。

生命保険金は受取人の固有の財産となるため、遺産分割協議の対象となりません。そのため、特定の相続人に財産を残したい場合に生命保険を利用する方法もあります。

遺言書で生命保険金の受取人をする場合は保険会社に可能か確認しておく必要があります。また遺言書で受取人の変更ができるのは平成22年度以降の契約になります。

 

遺言執行者の指定または第三者への指定の委託

遺言執行者とは遺言の内容を執行してくれる人です。

認知や相続人の廃除、第三者への遺贈などは遺言執行者が必要となります。遺言執行者を指定していなかった場合は家庭裁判所が選任します。

遺言執行者は誰を指定しても構いませんが、未成年者や破産者はなることができません。適任者がいない場合、利害関係のない弁護士や司法書士、行政書士といった相続手続きに強い専門家を遺言執行者に指定するのがおすすめです。

効力が発生しない付言事項を書く意味

上記で紹介した事項が遺言書で効力が発生する法定遺言事項です。

遺言書では法定遺言事項を記載しないと効力は発生しませんが、効力が発生しない事項を記載することも可能です。それを付言事項(法定外事項)と言います。

効力が発生しないなら記載する意味がないと思われるかもしれませんが、どうしてこの内容の遺言書を残したのか、なぜこのような分割にしたのかなどを記載しておくことで余計なトラブルや誤解を防ぐことができます。

遺言書を初めてみた相続人によっては納得がいかない遺言かもしれません。遺言者に聞きたくてもすでに亡くなってしまっているので、付言事項で遺言書について記載しておくことが推奨されています。

また、家族への最後のメッセージをここで残しておくこともできます。配偶者への感謝や子どもへの想いなどを記載しておくことができます。

まとめ

さて、いかがでしたか?

今回は遺言書の効力について解説させていただきました。

遺言書は効力を発生させることができる法定遺言事項があります。それ以外のことを記載しても効力を発生させることができませんので注意しましょう。

不安がある場合は弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

以上、「遺言書にはどんな効力があるのか?種類別に解説!」でした。

最後まで、お読みいただきありがとうございました。

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