昨今、注目を集めている遺言書。
自分が亡くなった後の意思を伝えることのできる遺言書ですが実際にどうやって書けばよいのかわからないという人は多いと思います。
そこで今回は簡単にできる遺言書の正しい書き方について解説していきます。
遺言書の種類
まずは遺言書の種類について見ていきましょう。
遺言書の種類には次の3つがあります。
・公正証書遺言
・秘密証書遺言
自筆証書遺言とは、その名の通り、自分で書き残す遺言書のことです。自筆証書遺言は手軽に書ける、費用がかからないといったメリットがあります。
公正証書遺言は、公証役場で作成してもらう遺言書のことです。公証人が作成に携わるので、遺言書としての効力がきちんと発生する可能性が高いというメリットがあります。
秘密証書遺言は遺言書の中身を知られずに作成することのできる遺言書で、自筆証書遺言と公正証書遺言を足して2で割ったような特徴があります。遺言書の中身については自分で作成し、その封書について公証人が携わるような形です。
遺言書作成の費用
自筆証書遺言の場合は用紙や封筒を用紙すればよいので、特に費用はかかりません。
遺言書で費用がかかるのは公正証書遺言と秘密証書遺言です。ここで言う費用とは公証人に支払う手数料のことです。秘密証書遺言の場合は一律、11,000円ですが公正証書遺言の費用は目的物の価額、つまり相続財産の価額によって変わってきます。相続財産の価額が多ければ費用も高くなります。また相続人や遺贈する人が複数いれば、その人ごとの手数料が発生します。
遺言公正証書の作成手数料は、遺言により相続させ又は遺贈する財産の価額を目的価額として計算します。遺言は、相続人・受遺者ごとに別個の法律行為になります。数人に対する贈与契約が1通の公正証書に記載された場合と同じ扱いです。したがって、各相続人・各受遺者ごとに、相続させ又は遺贈する財産の価額により目的価額を算出し、それぞれの手数料を算定し、その合計額がその証書の手数料の額となります。
例えば、総額1億円の財産を妻1人に相続させる場合の手数料は、3①の方式により、4万3000円です(なお、下記のように遺言加算があります。)が、妻に6000万円、長男に4000万円の財産を相続させる場合には、妻の手数料は4万3000円、長男の手数料は2万9000円となり、その合計額は7万2000円となります。ただし、手数料令19条は、遺言加算という特別の手数料を定めており、1通の遺言公正証書における目的価額の合計額が1億円までの場合は、1万1000円を加算すると規定しているので、7万2000円に1万1000円を加算した8万3000円が手数料となります。次に祭祀の主宰者の指定は、相続又は遺贈とは別個の法律行為であり、かつ、目的価格が算定できないので、その手数料は1万1000円です。 遺言者が病気等で公証役場に出向くことができない場合には、公証人が出張して遺言公正証書を作成しますが、この場合の手数料は、遺言加算を除いた目的価額による手数料額の1.5倍が基本手数料となり、これに、遺言加算手数料を加えます。この他に、旅費(実費)、日当(1日2万円、4時間まで1万円)が必要になります。作成された遺言公正証書の原本は、公証人が保管しますが、保管のための手数料は不要です。日本公証人連合会HPより
http://www.koshonin.gr.jp/business/b10
財産価額や相続人の数などで違いはありますが、一般的な家庭であれば、数万円から十数万円ほどで作成できると思います。
簡単な遺言書の書き方
最も簡単な遺言書の書き方は自筆証書遺言です。
紙とペンがあれば、今すぐにでも簡単に書くことができます。但し、遺言書は民法の規定に沿って正しく書かないと無効となる危険性がありますので注意してください。
その点、公正証書遺言は公証人が作成してくれるので、無効となる危険性は低いと言えます。しかし公正証書遺言の場合、公証人との打ち合わせや必要書類を収集しなければなりません。それらが面倒な場合、費用はかかりますが弁護士や司法書士、行政書士といった専門家に依頼する方法もあります。公証人との打ち合わせや必要書類の収集もしてくれますので、こちらの方が簡単に書けると言えるかもしれません。
自筆証書遺言と公正証書遺言はどっちがいいの?
秘密証書遺言はトラブルとなるケースもあり、メリットがさほどないことから利用する人はあまりいません。従って、遺言書を書く時に迷うのは自筆証書遺言か公正証書遺言のどちらかになると思います。
それぞれにメリットとデメリットがあります。自筆証書遺言は手軽に作成できるという点や費用がかからないというメリットがあります。一度、書いた自筆証書遺言を新しく書き換えることも簡単にできます。反面、正しく書かないと無効となってしまったり、解釈に問題が発生し相続人たちがトラブルとなる場合もあります。また、原本が一通しかない為、誰かに書き換えられてしまったり、紛失・汚損などの危険性もあります。さらに自筆証書遺言は検認という手続きが必要となります。これは遺言者には関係ないことですが、自筆証書遺言は相続人などが遺言書を家庭裁判所に持っていき、確認作業をしなければなりません。
公正証書遺言は公証人が作成に携わるので、無効となる危険性はまずありません。また原本は公証役場に保管されるので、紛失してしまっても謄本を再発行してくれます。偽造される心配もありませんし、検認手続きも必要ないです。公正証書遺言のデメリットとしては費用がかかることと、時間と手間がかかることです。上記でも述べたように公証人への手数料が必要となりますし、公証人との打ち合わせや戸籍謄本、不動産登記事項証明書、固定資産税評価証明書などといった必要書類を集めなければなりません。こういった作業を弁護士や司法書士、行政書士といった専門家に依頼することもできますが、その場合さらに費用がかかります。
専門家は公正証書遺言を提案することが多いです。それはやはり、トラブルや無効となる危険性を避けるためにあります。
「自分で書くのは不安だ」
「費用がかかってもちゃんとしたものを書きたい」
という人は公正証書遺言が良いでしょう。
「自分の手で書きたい」
「費用をかけずに作成したい」
という人は自筆証書遺言が良いと思います。
実際、自筆証書遺言で書いている人も多いようです。まずは自筆証書遺言で書いてみて、ちょっと自分には無理そうだなという人は専門家に相談するのも良いかもしれません。
正しい自筆証書遺言の書き方
それでは次に正しい遺言書の書き方について解説していきます。
公正証書遺言は公証役場に問い合わせれば色々と教えてくれますので、ここでは自筆証書遺言の正しい書き方について説明していきたいと思います。
自筆証書遺言の見本
まずは自筆証書遺言の見本を見てみましょう。
自筆証書遺言の要件
まず自筆証書遺言の大前提として、その名の通り自筆で書かなければなりません。上記のサンプル画像ではパソコンで作成していますが、自筆証書遺言の正しい書き方(要件)としては遺言者が全部、自筆で書くというところにあります。遺言の内容や日付、氏名の全てを自分で書き、印鑑を押印して作成します。
日付に関しては「平成○○年〇月〇日」といったように正確に書きましょう。遺言書を書き直した場合、先に書いたものなのか後に書いたものなのかをはっきりさせる必要があるからです。
氏名に関しては名前だけといった形や、ペンネームでもその遺言者であることが分かれば有効とされています。しかし、余計な問題を引き起こさないように自分の氏名をはっきりと記入するのが良いでしょう。
押印については実印ではなく三文判(認印)や拇印(指印)でも有効です。とはいえ、押印に関しても、なるべく実印を用いた方が良いでしょう。
自筆証書遺言はパソコンで作ってもいいの?
上記のように自筆証書遺言は自分で書かなければなりません。
従って、パソコンやワープロなどで作成した遺言書は自筆証書遺言としての要件を満たしていないということになります。「自筆できない」「うまく書けない」という人は解釈をめぐって後々トラブルとなる危険性もありますので、公正証書遺言を選択するのが良いかもしれません。
自筆証書遺言の訂正の仕方
自筆で書いていると、高い確率で誤字脱字が発生するものです。
その時に修正テープなどを使用してはいけません。訂正の仕方も民法にきちんと記載されており正しい訂正方法を取る必要があります。
自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
訂正の仕方ポイント
・変更した旨を付記する
・変更した旨を付記した場所に署名する
・変更場所に押印する
画像のように下部にまとめて変更した旨を付記しても良いですし、変更したい行の左横のスペースに「本行○○を△△に訂正。遺言者の氏名」といった風に書いても良いです。あまりにも訂正が多くなってしまうと読みづらくなってしまう可能性があるので、そういった場合は書き直した方が良いかもしれません。
自筆証書遺言が無効となる場合
せっかく書いた遺言書が無効とならないように自筆証書遺言が無効となるケースについて見ていきましょう。
・パソコンやワープロで書いた
・日付がなかった
・日付を〇月吉日とした
・氏名を書かなかった
・訂正方法を間違えた
・夫婦共同で1枚の遺言書に書いた
訂正方法が間違っていた場合、その訂正は無効となり訂正はなかったものとなります。また無効な訂正で元の字が読めなくなった場合は記載されていないものとされてしまいます。さらに共同遺言も禁止されているので、夫婦などが同じ紙に遺言を書いた場合も無効となります。
例文で見る遺言書の書き方
それでは具体的な書き方として例文を使って見ていきましょう。
不動産の書き方
所 在 ○○県○○市○○町
地 番 ○○番
地 目 宅地
地 積 ○○○.○○平方メートル
(2)建物
所 在 ○○県○○市○○町
家屋番号 ○○番
種 類 居宅
構 造 木造2階建
床面積 1階 ○○.○○平方メートル
2階 ○○.○○平方メートル
不動産の書き方は上記のように所在や地番、地目などを正確に書きます。
この情報に誤りがあると後々トラブルとなる危険性があるので、きちんと正しく書く必要があります。これらの情報は登記事項証明書(登記簿謄本)や固定資産税評価証明書に記載してあります。登記事項証明書は法務局で、固定資産税評価証明書は市町村の役場(東京23区は都税事務所)で発行してくれます。
相続分の指定
妻 作野ケイコ 3/5
長男 作野ダイスケ 1/5
長女 作野アイ 1/5
遺言書では家と土地を〇〇に、現金を△△に、という指定もできますが、上記のように相続分の指定もできます。もっとも、相続分の指定の場合はその割合に従って相続人同士で何をどのように分けるか話し合う必要があります。
配偶者にすべて相続させる
上記のように相続財産を配偶者など、一人にすべて相続させたいときは「全ての財産を相続させる」といった書き方でも大丈夫ですが、相続人が遺言者の相続財産を把握していない場合もあるので、相続財産についてはできるだけ詳しく書いておくほうが良いでしょう。
また、書き忘れや書いていた財産以外のものが出てきた場合にトラブルとならないよう「その他一切の財産」と書いておくのがおすすめです。こうしておけば財産の変動があった場合でも書き直す必要がありません。
遺留分減殺請求について
配偶者など一部の相続人に全て相続させる内容の遺言書の場合、他に相続人がいればその相続人の遺留分を侵害していることになります。
たとえ遺言であっても、この遺留分は保障されるので遺留分減殺請求をされると、遺留分を侵害している者はその請求に応じなければなりません。従って、遺留分を侵害している内容の場合は、遺留分減殺請求をしないで欲しい旨を記載しておくと良いでしょう。
もっとも、これは「お願い」であって法的な拘束力などはありません。また、トラブルになりそうな場合は遺留分を確保した内容にした方が良いかもしれません。
遺産分割禁止
(1)土地
所 在 ○○県○○市○○町
地 番 ○○番
地 目 宅地
地 積 ○○○.○○平方メートル
遺言では5年間を超えない期間、遺産の分割を禁止することができます。5年を超える遺産分割禁止の内容でも無効となることはないですが、その場合は遺言者の意思を尊重してくれるよう記載するのが良いでしょう。
遺産分割禁止の活用法としては残された配偶者が自宅に住んでいる場合や、相続人に未成年者がいる場合などがあります。一般的に家やその土地などの不動産が遺産の大部分を占めているという人が多いので、相続人で法定相続分通りに分けようとすると不動産を売却しなければならないような事態になります。そうすると残された配偶者が困ってしまうことになるので、そういったときに活用します。
また、相続人に未成年者がいる場合なども活用することができます。相続人が未成年の場合は、通常その親が法定代理人として遺産分割協議などの法律行為をおこないます。しかし、その親も相続人となっているときは、利益相反になってしまう為、法定代理人とはなれません。この場合は、家庭裁判所に請求し特別代理人を選任してもらうことになります。このような理由から未成年者が成年になるまで遺産分割を禁止しておくということもできます。
遺言執行者の指定
○○県○○市○○町○丁目〇番〇号
作野ケイコ
昭和○○年〇月〇日生
遺言では遺言執行者を指定することができます。遺言執行者とはその名の通り、遺言を執行してくれる人のことです。
遺言執行者は未成年者と破産者以外、誰でもなることができます。従って、配偶者などの相続人がなることもできますし、信頼のおける知人・友人などでも大丈夫です。
但し、遺言は遺言者の一方的な意思表示なので、遺言執行者を指定したからといって、その指定された者が就任するかどうかは別の話になります。「そんな話は聞いていない!」「自分にはできない!」という人もいるかもしれないので事前にお願いをしてから遺言書に書くのが良いでしょう。
葬儀について
⑴ 葬儀や告別式は行わず家族だけで見送ること。
⑵ 知人や友人へ亡くなったことの報告は妻の作野ケイコに一任する。別途用意した連絡表も参考にすること。
最近では大々的な葬儀や告別式は行わずに家族だけで見送るかたちも増えています。事実、そういったかたちを希望する人も増えています。遺言書にも、葬儀の方法を書き残すことができますが、これには法的拘束力はありません。あくまでも本人の希望というかたちになります。
もっとも、なるべくなら本人の希望を尊重したいと思うのが通常ですので、自分の意思が反映される可能性は高いと言えるでしょう。エンディングノートでも言えることなのですが、こういった希望を書いていても、実際に自分の死後のことをしてくれるのはご遺族の方々になるので遺族の考えや希望が重要となります。
従って、事前に自分の意思を家族にしっかりと伝えておく必要があります。また、もうひとつ重要なのは家族だけでなく兄弟や親族にも伝えておくことです。よくあるのが家族は遺言者本人の意思を尊重して、葬儀も大々的には行わないようにしようと思っても兄弟や親族が反対するということです。やはり葬儀は重要だという考えの人もいますし、実際にその場面になると色々としてあげたいと思う人もいるでしょう。そうすると家族であっても、その反対を押し切って遺言者の意思を実行することが難しい状況になります。
もうひとつ問題なのは、自筆証書遺言の場合、家庭裁判所で検認作業をしなければなりません。通常は葬儀や告別式などが済んでひと段落してから自筆証書遺言の検認、開封という流れになります。葬儀のことについて書かれた遺言書の内容は葬儀などが終わってから家族は知ることになるわけです。これでは意味がないので、自筆証書遺言は封印しないで保管しておくということになるでしょう。(封印していなくも検認は必要)それか、葬儀の方法については別の遺言書に記載しておくか、エンディングノートに記載しておくという方法もあります。
さらにもうひとつ、葬儀に関しての問題は葬儀の決定は死亡してから時間がないということです。通常、亡くなったその日に葬儀の手配をすることになります。遺族は悲しみに暮れている間もなく、すぐに葬儀などの手続きをしなければなりません。そんなときですから、まともな判断ができない人もいるでしょう。こういったこともあり、最近では自分で葬儀の予約をしておく人もいます。
散骨について
第〇条 遺言者は祭祀主宰者として妻の作野ケイコを指定する。
近年では、遺骨を墓地に納骨するのではなく、海などに散骨することを希望する人も増えています。しかし日本では「墓地、埋葬等に関する法律」(墓埋法)により、原則として埋葬等は許可を受けた墓地以外にしてはいけません。
では散骨はどうなのか。
以前は散骨であっても法律に違反するという考えが主流でしたが、当時の厚生省(現在は厚生労働省)は散骨は墓埋法では想定しておらず、法の対象外という見解を示しました。また、法務省も「祭祀として節度をもって行われるかぎり問題はない」という見解を示しています。従って、散骨が直ちに違法となるということにはならなそうです。
しかし、だがらといってどこに散骨しても良いというわけではありません。墓埋法では墓地以外の地中に納骨することを禁じているので、墓地の中で散骨する方法は問題なさそうですが、それ以外の地中に埋めるような散骨はできません。ということもあり海に散骨する人も多いのですが、海もどこでも良いわけではありません。漁業権が存在するような場所だと、色々と問題が発生する危険性があるので、そういった場所は避ける必要があります。
また葬儀の方法と同様に散骨についての記載も法定外事項なので、遺言書に記載しても法的拘束力はありません。よって事前に家族の同意を得ておくのが良いでしょう。
その際は、散骨を確実に実行してもらえるよう祭祀主宰者も指定しておくのも良いと思います。
ペットについて
2 受遺者 猫田イヌコは生涯にわたり遺言者の飼い猫レオを終生飼育して世話をすること。
最近ではペットを飼う人がとても多くなっています。
一人暮らしの方で家族のように可愛がっている人も多いでしょう。しかし自分が亡くなった後は、どうしたらよいのかと不安になると思います。
そこで、自分が亡くなった後は信頼できる人に世話をしてもらえるよう遺言しておくことができます。ペットの飼育費用として遺産の一部を遺贈することもできます。この場合は負担付遺贈にすると良いでしょう。負担付遺贈とは一定の義務を負う代わりに、遺贈することで、上記の例文のようにペットの飼育をする代わりに遺産の一部を遺贈するということです。
また、受遺者が遺贈だけ受けて義務を履行しないということがないよう、きちんとペットの飼育をするように遺言執行者を指定しておくのが良いと思います。
実践!自筆証書遺言を書いてみよう
それでは実践編として自筆証書遺言の書き方を詳しく解説していきます。
ステップ1 財産目録と相続人関係図を作る
早速、遺言書を書いてみましょう。
まず遺言書を書く前にやるべきことがあります。それは財産目録と相続人関係図を作成することです。
絶対に作成しなければならないものではないですが、せっかく遺言書を書いても、どの財産を誰に相続させるかが間違って記載されてしまうと意思を反映できないことになってしまいますので作成することをおすすめします。意外と自分でも財産の全てをきちんと把握していないこともあります。
ここでの注意は財産目録と相続人関係図を遺言書に添付する場合、これらも自筆で書かないと無効となってしまうということです。
※追記
法改正により2019年1月13日から自筆証書遺言の財産目録に関してはパソコンでの作成も可能となりました。
ステップ2 遺言内容を考える
次に財産目録を参考にしながら、どのように財産を分配するかなど遺言書の内容を考えましょう。
大体の内容は考えていると思いますが、注意しなければならないのが遺留分です。
遺留分とは,一定の相続人のために,相続に際して,法律上取得することを保障されている相続財産の一定の割合のことで,被相続人(亡くなった方)の生前の贈与又は遺贈によっても奪われることのないものです。遺留分減殺請求とは,遺留分を侵害された者が,贈与又は遺贈を受けた者に対し,遺留分侵害の限度で贈与又は遺贈された物件の返還を請求することです。
裁判所ウェブサイトより
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_07_13/index.html
遺留分とは簡単に言うと、相続人が最低限度もらえる相続分のことです。
例えば、被相続人(故人)が愛人に財産を全て遺贈するという遺言書を書いていたとします。この通りに執行されると残された配偶者や子供は困ってしまいますよね。そこで法律では相続人に一定の相続財産が渡るようにしたのです。それが遺留分です。
もっとも、遺留分はただ黙っていてももらえるものではなく、遺留分を侵害している者に遺留分減殺請求をしなければなりません。従って、相続人が遺留分減殺請求をしないという可能性もあります。遺留分を侵害している遺言書が無効となるわけではなく、遺留分を侵害するような内容の遺言書でも構いません。
ただし、遺留分を侵害するような内容の遺言書の場合、相続人が遺留分減殺請求をする可能性があるので、そのままの内容で意思が反映されるかどうかはわからないということです。よって無用なトラブルを避けるなら、遺留分を侵害しないような内容の遺言書が良いでしょう。
ステップ3 下書きを作成する
いきなり用紙に書くのではなく、下書きを作成しましょう。
下書きは必ずしも必要ではないですが、前述したように間違えた場合、訂正しなければなりません。この方法がかなり面倒です。
また訂正箇所が多ければ、それだけ見づらい遺言書となってしまいます。よって下書きをして、それを清書するのが良いでしょう。下書き自体はパソコンやワープロで作成しても大丈夫です。
ステップ4 清書用紙と筆記用具を用意する
次に遺言を清書する用紙と筆記用具を準備します。
これらは決まった方式があるわけではありませんが、遺言書を書いてから自分が亡くなって執行されるまで長時間かかる可能性も当然あります。そういうことを考慮すると長期間の保存に耐えられる用紙と筆記用具が望ましいと言えるでしょう。
最近のものは耐久性が高いのでそこまで気にする必要はないと思いますが、もし20年30年と経ち、用紙も変色して字も薄くなり内容がわからないということになると台無しになってしまいます。一般的に酸性紙は長期保存に向かないと言われています。また筆記用具も鉛筆などではなくペンか万年筆などを使用するのが良いでしょう。
ステップ5 清書する
それでは、下書きした内容を元に清書していきましょう。
清書する方法としては、下書きを見ながら清書する方法もありますが、これだと間違えてしまう危険性があります。そこで、おすすめなのはトレース台を使って清書する方法です。
トレース台は図面の複製や写経、写し絵などに使われるもので、下書きの原稿を載せ、その上に清書する用紙を重ねて下から蛍光灯の明かりで照らすことで簡単に複写することができるものです。
とは言ってもトレース台を持っている人はなかなかいないと思いますので、他の方法も紹介します。 ガラステーブルがある人はその下にライトを置き、その上に下書きを置いてさらに清書用の用紙を置きます。 これでトレース台の代わりになります。
ステップ6 日付を記入する
自筆証書遺言の要件は年月日が書かれていることです。
遺言書を書いた日の日付を記入しましょう。日付は西暦でも元号でも、どちらでも大丈夫です。
ステップ7 署名・押印する
日付を記入したら、次は署名をします。「遺言者○○○○」という風に署名しましょう。
押印は横書きなら氏名の右横、縦書きなら下にします。認印でも有効ですが、無用なトラブルを避ける為にも実印が良いでしょう。なお、押印はすべての箇所に同じ印鑑を使用しましょう。
ステップ8 遺言書が複数枚になった場合はホチキス止めし契印する
遺言書が複数枚になった場合はホチキスなどで綴じて契印しておきましょう。
一応、契印がなくても1通の遺言書であるということが確認できれば契印がなくても有効としている判例もありますが、偽造や紛失の恐れもありますのでホチキスで綴じて契印しておいた方が安心です。
ステップ9 遺言書を封筒に入れる
遺言書の保管方法については特に決まりはなく、書き終えた遺言書をどのように保管しておくかは、その人の自由です。中を見られても困らないという人は、そのまま保管しておいても大丈夫です。
しかし、偽造防止や無用なトラブルを避けるのなら封筒に入れて封をとじて保管しておくのが良いでしょう。封筒に入れる場合は発見した人がすぐにわかるように封筒の表に「遺言書」と書いておきます。
自筆証書遺言は家庭裁判所で検認手続きをしなければなりませんので、発見した人が誤って開封しないように「開封厳禁」「家庭裁判所にて検認手続きをしてください」という内容と氏名を裏面に記載しておきましょう。封筒自体に押印する必要はないですが、念のため、封じ目に封印しておくことをおすすめします。
ステップ10 保管場所を決める
最後に遺言書の保管場所を決めましょう。
公正証書遺言は原本が公証役場に保管されているので、遺言者に渡される正本や謄本を紛失しても再発行してくれます。また偽造の心配もないので、保管場所についてはあまり気にする必要はありません。
しかし自筆証書遺言の場合、保管場所が重要となってきます。
自筆証書遺言は原本しかありませんので、紛失や汚損しないように保管しておく必要があります。また、誰でもわかるようなところに保管しておくと、誰かが偽造したり破棄してしまう危険性があります。かといって、あまりにもわかりにくいようなところに保管しておくと、誰にも発見されないということもあり得ます。厳重に保管できるところで、尚且つ発見してくれるような場所が良いです。
紙は日光や紫外線により黄ばんだり変色する可能性があるので、日の当たらない自宅の金庫に保管したり、弁護士などの専門家や信頼できる友人・知人に保管してもらい、相続人に保管場所を伝えておくのも良いでしょう。
逆に遺言書を保管してはいけないのが銀行の貸金庫です。銀行は契約者が死亡したことを知ると銀行口座を凍結します。これは貸金庫も同様です。そうなると銀行で相続手続きをしないと貸金庫の遺言書は取り出せないということになってしまい本末転倒です。
公正証書遺言の書き方
最後に公正証書遺言の書き方についても少し触れておきます。
書き方と言っても公正証書遺言は公証役場で作成してもらいますので、まずは最寄りの公証役場に連絡してみましょう。そこで、どんな内容の遺言を作りたいのかを伝えると、必要書類を教えてくれますので、その書類を集めます。
そして必要書類を持参又は送付して公証人と打ち合わせをします。公証人が遺言書の原案を作成してくれますので、それを確認します。原案で問題なければ公正証書遺言の作成日を決めます。
当日は証人が2名必要なので証人2人と遺言者が公証役場へ出向きます。公証役場へ行くことが困難な場合は公証人に出向いてもらうこともできます(別途、出張料が必要)。証人は未成年や推定相続人、受遺者などはなれませんので、信頼できる友人・知人に頼みましょう。もし適当な証人がいなければ、公証役場の方で有料で用意してくれます。
当日は大体、1時間ほどで終わります。公証役場によって違いがあるかと思いますが、概ね、このような流れです。
コメント