今回は公正証書遺言を自分で作る方法をご紹介します。
必要書類を揃えるのが大変だったり証人が必要だったりハードルが高いと思われがちですが、実際にやってみると実はそうでもないかもしれません。
費用や手順について詳しく解説していきます。
そもそも公正証書遺言とは?
公正証書遺言とは公証役場で作成する遺言書のことを言います。
公証役場・公証人は,遺言や任意後見契約などの公正証書の作成,私文書や会社等の定款の認証,確定日付の付与など,公証業務を行う公的機関(法務省・法務局所管)です。中立・公正な公証人が作成する有効確実な書面を残すことにより,争いを未然に防ぐことができます。特に,「争族」「争続」とも揶揄(やゆ)される相続については,遺言書の作成はとても大事で、近時遺言公正証書を作成される方が増加しています。公証役場・公証人は,皆様に安全・安心をお届けします。ご相談はすべて無料です。いつでも,どこの公証役場でも,お気軽にご相談下さい。秘密は厳守します。
日本公証人連合会HPより
公証役場には公証人がおり、その公証人が遺言書を作成します。公証人とは裁判官や検察官など法律の経験が豊富なプロが担う公務員です。
公証人が作成するため効力が無効になるなどのリスクが低く、最も安心できる作成方法と言えます。
公正証書遺言の作り方
公正証書遺言の作り方としては大きく分けて2つの方法があります。
- 専門家に依頼する
- 自分で手続きをする
公正証書遺言を実際に作成するのは公証人ですが、その打ち合わせや必要書類の収集などが必要となってきます。そういった作業が面倒という場合は弁護士や司法書士、行政書士といった法律のプロに依頼する方法があります。
専門家に依頼しない場合はそういった作業を自分でやることになります。
自分で公正証書遺言を作るには?
では自分で公正証書遺言を作るにはどうすればいいのか。
まずは大まかで良いので遺言内容を決めます。「○○の不動産は妻に」「○○の預貯金は長男に」といった具合です。
あとは近くの公証役場に連絡するだけ。
これだけです。
厳密にはこれだけではないのですが、最初のハードルはこれだけです。最初から色々とする必要はありません。
あとはその遺言作成に必要となる書類を教えてくれるので、指示を受けた書類を役所や法務局から取得して揃えます。必要書類は持参しても良いですし、郵送しても良いです。
その後、公証人と打ち合わせをし、実際に公正証書遺言を作成する日にちを決めます。
当日は実印と費用を持参し、証人2名とともに読み合わせをし、内容に間違いがなければ署名と押印します。費用を払い、公正証書遺言の正本を受け取り終了です。
どうでしょうか。
思ったより簡単そうではないですか。
公正証書遺言の必要書類
- 遺言者と相続人の関係がわかる戸籍謄本
- 固定資産税納税通知書又は固定資産評価証明書
- 不動産の登記簿謄本
- 証人の確認資料
財産の種類などにもよりますが一般的に公正証書遺言作成に必要な書類は上記の4点です。
戸籍謄本は相続人を確定させるために、遺言者と相続人との関係がわかる戸籍謄本が必要となります。相続人が甥、姪などの場合や本人の戸籍謄本だけでは遺言者との続柄が不明な場合は、その続柄の分かる戸籍謄本が必要になります。
不動産を所有している場合は「固定資産税納税通知書又は固定資産評価証明書」「登記簿謄本」が必要です。固定資産税納税通知書は毎年届くものですが、捨ててしまった場合は役所で固定資産評価証明書を発行してもらいましょう。登記簿謄本は法務局で発行してもらえます。なお遺言書で不動産の指定をしない場合は不要です(不動産のすべてを○○に相続させるなど)。
証人の確認資料は公正証書遺言を作成する当日に立ち会う証人の身分証明などです。
公正証書遺言を作成する際は遺言を実際に執行(実行)する人を指定します。これを遺言執行者と言います。この遺言執行者の特定のために住所や職業、氏名、生年月日がわかる資料が必要になります。ただし、遺言執行者に相続人や受遺者を指定した場合は不要です。
受遺者とは遺言者の財産の遺贈(もらう)を受ける者を言います。基本的に相続人(法定相続人)以外の人と思ってもらえば良いです。法定相続人ではない人に財産を遺贈させる場合はその受遺者の住民票が必要になります。また法人の場合は登記簿謄本が必要になります。
また、財産に株券や預貯金がある場合は、株券の銘柄と株数、預貯金は金融機関名や口座番号、金額などの情報が必要になります。特に書類が必要というわけではありませんので、それらの情報をメモしたものでも良いです。
証人について
公正証書遺言作成の場合、当日その場に立ち会う証人2人必要になります。
この証人については、ちょっと注意点があります。証人は誰でも良いというわけではなく相続人と受遺者はなれません。また相続人と受遺者それぞれの配偶者、直系血族等の利害関係人や未成年者も証人にはなれません。
相続人・受遺者・相続人の配偶者・受遺者の配偶者・直系血族・未成年者・公証人の配偶者・公証人の四親等内の親族・公証人の書記及び使用人
直系血族とは遺言者の祖父母・父母・子・孫など、直系で繋がっている者です。兄弟などはこれにあたりませんが相続人になる場合はなれません。
もし証人がいないときは、公証役場で証人を手配してもらうこともできます。
公証人の費用
公正証書遺言の費用は公証人への作成手数料と遺言書の枚数にかかる手数料となります。
公証人への手数料は、遺言により相続又は遺贈する財産の価額を目的価額として計算します。つまり財産の価値(値段)で算出するということです。そのために不動産の評価額や預貯金、株券の情報が必要となるわけです。また相続人や受遺者の人数によって変動します。
目的の価額 | 手数料 |
100万円以下 | 5,000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 17,000円 |
1,000万円を超え3,000万円以下 | 23,000円 |
3,000万円を超え5,000万円以下 | 29,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 43,000円に超過額5000万円までごとに13,000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 | 95,000円に超過額5000万円までごとに11,000円を加算した額 |
10億円を超える場合 | 249,000円に超過額5000万円までごとに8,000円を加算した額 |
※「超え」とはその額は含まれません。例えば「100万円を超え200万円以下」とは1,000,001円~2,000,000円ということです。
以上が公証人への手数料になるのですが、これは1人の相続人又は受遺者に対する手数料です。遺言書は相続人・受遺者ごとに別の法律行為となるため、相続人が2人の場合は、それぞれの手数料が発生します。その合計額が最終的な手数料となります。
また、目的価額を算出できない時は500万円とみなされます。さらに遺言加算という特別の手数料があり、1通の遺言公正証書に対して目的価額の合計額が1億円までの場合は、11,000円を加算するというルールもあります。さらに祭祀の主宰者の指定は、相続又は遺贈とは別個の法律行為であり、目的価額が算出できないので、その手数料は11,000円となります。
妻に6,000万円なので手数料は43,000円、長男に4,000万円なので手数料は29,000円、その合計額は72,000円となります。目的価額の合計額が1億円以下なので、11,000円を加算され、最終的に83,000円が手数料となります。
1億円の財産を妻1人に相続させる場合の手数料は43,000円、目的価額の合計額が1億円以下なので、11,000円が加算され、54,000円が手数料となります。
また遺言者が病気などで公証役場に行くことができない場合は公証人に出張してもらって作成することもできます。手数料は目的価額による手数料額の1.5倍が基本手数料となります。そしてこれに、遺言加算手数料が加わります。その他に、旅費(実費)、日当(1日2万円、4時間まで1万円)が必要になります。
イメージが湧かないかもしれませんが一般的な家庭なら5~15万円くらいになると思います。
あとがき
大まかではありますが以上が公正証書遺言の作り方です。
日中に動くことができて、公証役場や役所とのやり取りが面倒でなければ自分でもできる内容かと思います。
一度作ったからと言って、変更ができないわけでもなく作り直すこともできますので、あまり肩肘を張らずに挑戦してみても良いかと思います。
参考になれば幸いです。
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