口頭(口約束)でした遺言は有効なのか。
お盆や正月など子供が帰省した時に「この財産はお前にやるから母さんの面倒を見るように」とか、自分が亡くなった後のことなどの話が出ることもあるでしょう。
またお世話になった友人や知人にそんな話をすることもあるかもしれませんね。
こういった話は遺言として成立するのでしょうか。
口頭での遺言は無効
遺言には法律で定められた方式があります。
その方式に従わない遺言は無効となり、効果は発生しません。その場合、相続人は遺産分割の協議を行い、財産を分けることになります。
原則として日本の法律では遺言は書式によってすることが求められています。その方式は「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」などがあります。
従って口頭で自分の死後の財産分与について相続人に伝えていたとしても残念ながら無効となります。しっかりと内容を伝えていたとしても、法律に従った方式ではないですし、その約束を証明する術もありません。実際の手続きでは遺言書を金融機関や法務局に持参して相続手続きをすることになるのですが、遺言書がない場合、その手続きを行うことができません。
もっとも、法的拘束力がないという話であって相続人がその意思を汲み取る可能性もあります。その場合でも相続人が遺産分割協議を行うことになります。
口頭での遺言が有効になる場合
口頭での遺言は無効とお話しましたが、方法がないというわけでもありません。
上記でご紹介した「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」は普通方式遺言と呼ばれるものです。
これに対して「特別方式遺言」と呼ばれるものがあります。
これは命の危機が迫っているなど普通方式の遺言が出来ない場合などに使われる方法です。
「一般危急時遺言」と「難船危急時遺言」という2種類があり、病気や怪我で命の危機が迫っている場合は一般危急時遺言、船や飛行機に乗っている場合は難船危急時遺言となります。
【一般危急時遺言の要件】
- 遺言しようとする者が死亡の危急に迫っていること
- 証人が3人以上立合うこと
- 遺言者が遺言の趣旨を証人の1人に口授すること
- ロ授を受けた証人がこれを筆記すること
- 口授を受けた証人が筆記した内容を遺言者及び他の証人に読み聞かせ、各証人が筆記の正確なことを承認すること
- 各証人が署名押印すること
- 遺言の日から20日以内にその遺言書を家庭裁判所に提出して確認を得ること
口頭ではなく遺言書を作成しておくことでトラブル回避に
遺言は法律で定められた方式によってされなければ、その効力を持ちません。
とはいえ、言われた側はその言葉を鵜呑みにしているかもしれません。
また録音していたり、証人が出てくると話が違ってきます。後々相続人と財産についてトラブルになる危険性もあります。
従って、財産の分与については遺言書を作成して自分の意思をしっかりと残しておくのが必要なのです。
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